私、ヴァンパイアの玩具になりました
シーンと静まったリビングの空間に、ある人の笑い声が響く。

「…よく分かったね。……そうだよ、日向が言うとおり。僕がやった」

裕君は、クスクスと肩を揺らしながらサラッと暴露するとなにかを企んでいるかのように笑った。

裕君の笑顔を見て、私の背筋は凍るような感覚を覚える。

「……裕君…?……なんで言ったんですか…」

私は閉じていた口を小さく開いて俯く。

何を……考えているんですか…?…裕君の考えていることが…全く分からないです………。

「悪い?…ていうか、僕がいつ、誰にも言ったらダメって言った?」

裕君は私に冷たい視線と冷たい言葉を投げかける。

「…でも、…もし私が言ったら裕君が…」

「僕が優を責めるとでも?…それとも、僕が皆に何か酷いことを言われるから、私が気を使って言わなかったのに…って言いたいの?…良い人ぶるのもいい加減にしなよ」

裕君は私に本気でムカついたのか、裕君の手前にあったコップの水を私にぶちまけた。

「……………っ…」

ポタポタと滴り落ちる水滴が、私の頭と目頭を冷ます。

…冷たい…、……本当に……、私って……。

その時、激しい音を立てて椅子が倒れる音が聞こえ、私は顔をあげた。

「……お前、…いい加減にしろよ」

藍さんは裕君の胸ぐらを掴み、裕君を睨みつけた。

「……は?藍に関係ないじゃん…。ていうか、優が藍に僕の事を言わなかったって事はさ…。藍は優に信用されてないって…ことだよね」

藍さんに胸ぐらを掴まれているのに、裕君は余裕の笑みで微笑んでいて。そんな裕君に私は純粋に裕君に対する恐怖心しかなかった。

………裕君という人が、分からなくて…本当に分からなくて…凄く怖いです…。

「…んだと?!テメェ、調子のるのも…」

「もう…、本当に……」

藍さんの怒鳴り声を遮り、私は口をボソボソと動かす。

私の声は意外に大きかったようで、皆さんの視線が私に集まってしまった。

「………すいません、私も今日はご飯いりません…。…少し、部屋で頭を拭いてきます……」

私はヘラッと笑い、重たい空気のリビングから逃げ出すようにそそくさと出た。


「…………はぁ……」

私は部屋に向かう途中の階段で溜息を吐いた。

やっぱり、私のせいで…。…場の空気が悪くなりました…。

今頃、リビングはどうなっているんでしょうか…。私のせいで、殴り合いのケンカとかしてません…よね……?

「…ないない…。そんな事あるわけない…よね…。……だって、私が………」

…私がどうなろうと、藍さん達にとっては全く無関係なんですから。

裕君に何かを言ったとして、藍さん達にはメリットは無いから……。

「……はぁ…………」

部屋の中にはいり、私は脱衣場に向かうと小さなタオルを出して濡れた髪の毛を拭いた。

「………ついでに、お風呂に入ろうかな…」

独り言を交えた溜息を吐くと、部屋に戻り着替えを手に持ち、私は脱衣場で着ているものを脱ぐとお風呂に入った。
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