私、ヴァンパイアの玩具になりました

秘密だよ

「───……。─────……だから…」

「─────………、………で…」

…誰かの話声が聞こえる……。誰かな…。

身体を動かそうとしても、動かないや…。

目も開かない、声も出せない…。

…………なんで?

唯一、耳だけが聞こえる。

「───……分かった…──」

……………愛希君と…、裕君…?

「───……!───………!……優!!いい加減、起きな!!」

動かない身体を無理矢理、誰かに持ち上げられ、動かなかった身体は急に何かから抜け出したかのように動けるようになった。

「───………!!……う…っ!!」

ベットにまた投げ出され、私の喉からうめき声がもれる。

「いつまで寝てんの。もう夕方なんだけど。…学校、初日から休むとかバカじゃん」

少し雰囲気が違う裕君が、私の事を呆れた表情で見てきた。

「え?…初日…、…とは?」

嫌な予感がして、私の額からは汗が垂れる。

「…あれから、約一日経ってる。…優、一日中、寝てたってこと」

「え?!」

「…………後、…王神のもういいよ」

「えぇ?!」

裕君が昨日とは真逆な態度で、私は自分の耳を疑った。何かの聞き間違いじゃないのか、とも思ったけど、違う。

裕君が言ったことは、私の耳にちゃんと聞こえた通り。

「優、うるさい」

愛希君の注意に、私は自分の口を塞いだ。

ちょっと待って…、私、まだ何もしてない…ですよね……。え、じゃあ…なんで……?

「………あの…、なんで…急に……?」

考えても分からなかった私は、素直に裕君に聞くことにした。

「───…愛希が、…」

「秘密だよ。優に関係ないから」

裕君が口を開いて教えてくれる所で、愛希君が裕君の言葉を遮った。

「………そ、…そうですか…」

私は、これ以上聞いても、愛希君の機嫌を損ねるだけだと思い、話を終わらせることにした。

もう何も話すことはないかと思ったら、裕君が何かを思い出したかのように口を開いた。

「……で、言い忘れてたけど。…夜鬼学園って一日休んだら、次の日、どんな理由があっても担任の先生の手伝いをしないといけないんだって」

「え……?!」

そんな決まりがあったんですか?!初めて知りました…。

「まぁ、王神との引き換え、みたいな感じだね。…ドンマイ、優」

「王神なんかを庇うからだよ、バカ優」

愛希君、裕君の二人からのキツい言葉に苦笑いしか出なかった。

「…あ、そういえば、薫瑠が呼んでたよ。優のこと。早く来て、だって」

「へ?薫瑠さんがですか?」

「うん」

愛希君の伝言に、私は首を傾げた。少し和らいだ痛みにホッとしながら、不安に思うことが一つ。

日向さんは少しの間、薫瑠さんに近づかない方が良い、って言っていた…。

あの日向さんが苦笑いを浮かべるくらいだから、あまり近づかない方が良いのかもしれない…。

でも…、薫瑠さんが私を呼んでいる……。もしかしたら、人が変わったのはもう終わったのかもしれない…。

……行くしかないですよね…。

「そうですか、では行ってきますね…」

私は少しの間考えてから、ベットを出ると二人を置いて部屋を出た。

「「───気をつけてね……」」

一瞬、二人の声が聞こえた気がするけど、私は振り返らずに、薫瑠さんの部屋へと向かった。
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