私、ヴァンパイアの玩具になりました
「……そういえば、優さん。今日は随分と早いですね…。……もしかして、もう皆、起きてるんですか?……すいません。もう終わりましたので…」

薫瑠さんはそう言いながら、濡れた手を綺麗な白いハンカチで丁寧に拭き取った。

「……いえ、まだ誰もリビングにはいませんでした」

「あ、そうなんですか…。……では、何故…優さんは、ここに?」

「早くにリビングへ着いてしまって、まだ誰も来ていなくて…。皆さんが来るまで、暇になりそうだったので、勝手ながら庭を散歩しようかと」

「そうですか」

「はい」

一瞬、沈黙が起きる。その一瞬の沈黙をすぐに消し去ったのは私。

「薫瑠さんは毎日、花に水やりをしているんですか?」

「はい。…皆、夜型なので朝早く起きれないらしく、朝早く起きれる俺がしようかと。…皆は執事やメイドにやらせろ、とか言うんですが、花に一輪一輪、愛情をこめながら水やりをしたくて」

「…薫瑠さんは本当に、優しいんですね……。花にまで、優しいって…さすが薫瑠さんです」

「そんな事ないですよ。…ただ、花にも心はあるんです。…毎日、愛情をこめて水やりをすると、綺麗に咲いてくれます。…人と同じです。……愛情をこめて育ててもらえれば、心が綺麗な人に成長します。……優さん、あなたのようにです」

ニコッと薫瑠さんは、優しく微笑んでくれて。薫瑠さんの言葉に、嬉しくて思わず頬が緩んでしまう。

「…そんな事……」

「ありますよ。……それに、あなたはいるだけで周りが癒されます。…本当の花より、花らし…」

「…か、薫瑠さん…。…さすがに…、そこまで言われると……は、…恥ずかしいです…」

私は口をゴニョゴニョとしながら、赤くなった顔を両手で隠し話す。

薫瑠さんのストレートなお世辞に、バカな私は恥ずかしくなってしまい、途中で止めてしまう。(褒め言葉として受け取っていいのか、分かりません。)

「……あ、…す…、……すいません。…本当の事になると、つい沢山話してしまうんです…」

「…そ、その言葉も恥ずかしいです……」

薫瑠さん、お世辞が上手すぎます…。女の人の事を分かりきってますね……。

………さすが薫瑠さん…。…やっぱり、凄いです……。

「………す、すいません…」

薫瑠さんは、私が言ったことに対して、重くとらえてしまったのか、何も悪くないのに私に頭を下げて謝る。

「…あ、…謝らないで下さい…。薫瑠さんは全くもって、何も悪くないです。むしろ、そう言っていただけて、とても嬉しいです…」

「……そ、そうですか?………なら、安心しました…」

私がニコッと笑うと、薫瑠さんも安心したかのようにふわっと笑う。

ふと気がつけば、太陽は顔を出し、外の霧は消えていて。花は風に揺れ淡い香りを漂わせていた。

「……そろそろ戻りましょうか?…もう7時近いと思いますので」

「…そうですね」

私と薫瑠さんは、二人肩を並べて家の中へ戻った。

そのまま、リビングへ行くと愛希君と日向さん以外はもう集まっていて。

私と薫瑠さんは急いで謝り、自分の席へ向かった。

その後、愛希君と日向さんは少し遅れてリビングへ来た。

お腹がペコペコだった私は、お腹を鳴らしながらご飯がくるのを待っていたんだけど…。

…やっぱり、平和にご飯が食べれるわけもなく、愛希君と裕君の喧嘩は始まってしまう。

「ご飯、抜きにするぞ」

「「………………」」

…おじさんの一言で、喧嘩はすぐに収まりましたけど。

それから、怖い位に平和な朝ご飯の時間がきて、私は楽しい朝ご飯の時間を過ごせました。

けれど…、学園に着いた後にやる事があるなど、この時は忘れてました。
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