Wonderful DaysⅠ
結城でも、お兄さんとあんな感情的な会話出来るんだ。なんて感心していれば
「で、慧さんは何だって?」
蓮が結城に近付いて尋ねる。
「───チッ……」
それには答えずに舌打ちをすると、バイクに掛けてあったヘルメットに手を伸ばした結城。
「魁!」
もう一度、名前を呼んだ蓮に視線を向けた結城は、耳を疑うような言葉を発した。
「マリアが、慧に連れて行かれた」
「「は?」」
思わず蓮と声が被ってしまったけど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
「ちょっと! マリアがあんたのお兄さんに連れて行かれたって、どういう事!?」
マリアが関わっているなら、黙っていられない。
「学校帰りに拉致られた」
私の言葉に答えると、手にしていたヘルメットを被った結城。
「おい、魁!」
「絶ってぇ、連れ戻す。」
蓮の呼ぶ声に短く答えた結城は、ハンドルのグリップを回すと凄い勢いで走り去ってしまった。
「ちょっと、蓮。詳しく話を聞かせてもらえるかしら?」
その場に残った蓮に詰め寄れば
「俺が知るかっ! こっちが聞きてぇよ……」
本当に事情を知らないらしい蓮に、これ以上問い詰めても無駄だと悟った。