円卓の愚者ども
パンデモニゥム
門の向こう側は想像していたより広かった。

綺麗にガーデニングされた庭園。改めて見ると、ため息がでるほどの豪邸。
だが、薫は人間が住んではいけない建物のように感じた。

「おい。ちょっとまてよ。」

ガテン系のニイちゃんが吠える。

「俺らを入れる前に、まず、なんでここに呼んだのかを答えてもらおう。」

見かけのわりには盲点をついてくる。この一言がなければ他の連中、俺を含め中に入っていただろう。
声の主が間髪いれず丁寧な言葉で返す。

「それは先ほども申しましたように、あなた方が選ばれし勇者だからです。入りたくなければ、帰ってもらって結構です。」

何度も聞く「勇者」という言葉。薫はいまいちピンとこなかった。

「勇者」って、昔やったゲームのアレか?悪魔を倒し、世界を平和にする正義の騎士。
もし、そうだとしたら一番ほど遠い言葉だ。
俺は自動車工場で働く万年平社員だぜ?
他の5人も、お世辞にも「勇者」には見えない。

突然、明美ちゃんが冷静な口調で声の主に問いかける。

「あなたは誰?」
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