小悪魔な彼
「とりあえず、出ましょうか」
「……う、ん…」
「大丈夫です。
二人には先に帰ってもらうよう言っておいたので」
颯太に、何があったかなんて話してない。
だけど何かしら察したんだと思う。
だからきっと、二人を先に帰らせたんだ。
「颯太……」
「はい?」
「手……ずっと握っててね」
返事の代わりに、力が込められた左手。
心変わりなんかしない。
あたしの右手は
ずっとこの温もりだけあればいい。