The side of Paradise ”最後に奪う者”
綺樹は心外だと言いたげに眉を上げた。
「つもりだったんだけどな」
「駄目」
涼は即答で却下して、店の引き戸を開けた。
カウンター内にいる板前に目礼し、綺樹を先に歩かせる。
今日はカウンターは止めた。
隅のテーブル席を用意してもらった。
「いい店だ」
座った綺樹がにっこりと笑う。
流石に場慣れしているだけある。
ほんの数席しかない、こじんまりした店で味はいい。
雰囲気も適度に砕けていて話しやすい。
「あなたは日本酒じゃないほうがいい?
白ワインも出してもらえるけど」
綺樹はカウンターのほうを見て迷った。