The side of Paradise ”最後に奪う者”

「おまえと寝られなくなるのは残念だけどね」


フェリックスが苦笑いのようなのを浮かべている。


「お別れのキスをしよう」


綺樹は立ち上がろうとしたが、足に力が入らなかった。


「やめとけ」


ベッドから出ることか、別れのキスか、どっちを止めるのか意味をとりかねた。

ドアがノックされる。

使用人がドアを開けて会釈した。

続いて入ってきたのが自分の父親なのに、綺樹は衝動的にベッドから立ち上がろうとしてそのまま床に座り込んだ。


「父さん」


フェリックスが手を貸そうとして動きかけたが、尚也が目で止めて娘をベッドに戻した。

尚也の手に指を伸ばすと、優しく握ってくれる。

ほっとしたように綺樹が笑うのをフェリックスは遠くから見ていた。


「よかった」


呟く。

まだあった。

居場所が。

でも同時によくわかっていた。

この居場所は幻のようにはかないと。
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