The side of Paradise ”最後に奪う者”
「帰るかな」
寒風吹く窓の外を見る。
NYはもっと寒い。
だからもっと人のぬくもりが恋しくなるだろう。
時限爆弾のスイッチを押す夜はすぐに来る。
ここまでだな。
あそこまで涼が激怒したのだから、知人関係まで戻ったのだと同じだろう。
「喧嘩か?」
高木の声にはっとして振り返った。
「まあ、ど派手だったな」
「すいません」
綺樹は微笑して頭を下げた。
「まあ、夫婦喧嘩は犬も食わないからな」
夫婦じゃないことは知っているはずだ。
綺樹は微笑したままだった。