The side of Paradise ”最後に奪う者”

背を向けた。

一瞬だけでもまぶたに二人の残像がこびりつく。

綺樹は歩き出した。

早く逃げないと。

声などかけられたくなかった。

記憶が無いながらも前妻と知っていて、そして今は全く関心がない。

そんな涼に礼儀的に声をかけられ、相手の女性を紹介される。

綺樹は階段までたどり着くと見上げた。

険しいな。

この道は思ったよりも険しい。

私は進めるのだろうか。

右手に更に川下へ行ける道が伸びているのに気が付いた。

足を向ける。

そうだ、こういう道もあるのだ。

口元にかすかに笑いを浮かべた。

こういう楽な道。

顔を背けて、ひたすら転がり落ちていく。

Rolling down,down,down・・・。

綺樹は呟きながら暗がりの中へ進んでいった。
< 89 / 819 >

この作品をシェア

pagetop