【完】私は貴方を愛せない


本気だ。

斗真君は。


私は一回大きく息を吸い込み決意した。


「分かった」


彼を利用する事にしたのだ。

・・・落ちるところまで落ちてしまおう。


「私の傍にいて」


「いいんっすか?」


「ただ、彼女とは離れないように」


「えっ、そんな、嫌っす」


「じゃあ駄目」


「・・・杏奈さん、俺は杏奈さんだけを守りたいんですよ」



私は何も言わず首を横に振った。


・・・だって。


もしも、私がいなくなったら
貴方を支える人がいなくなってしまう。


たとえ嘘でもいいから、長年の彼女がいれば支えになってくれるだろう。



斗真君ならきっと立ち直れる。


言い方はひどいけど
いわば斗真君の彼女は保険としていた方がいい。




利用するだけ利用して、きっと私は斗真君の気持ちに答える事はできないだろうから。



「杏奈さんが、そこまで言うなら」


「・・・ありがとう」


「でも俺の一番は杏奈さんです。分かっていてください」




真っ直ぐな想いをぶつけてくる。

ああ、そうか。
私が斗真君を受け入れてしまうのはきっと似ているからだ。


涼介───。

貴方に。
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