契約妻ですが、とろとろに愛されてます
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琉聖さんが出て行った後、私はもう一度まどろんだ。次に目を覚ますと部屋が薄暗くなっていた。


あくびをかみ殺して寝室を出てリビングルームに行き、掛け時計を見ると琉聖さんがベッドを出て行ってからずいぶん経っているのがわかった。


「四時過ぎ……あ、佳代子さんは……」


キッチンを覗いても、いつも五時過ぎに帰る佳代子さんの姿が見えない。


書斎のドアが開いていて琉聖さんの声が洩れてくる。電話中らしい。しかも流暢な英語。琉聖さんの語学力は知っているけど、久しぶりに聞く英語にほーっとため息が出るくらいカッコイイ。


聞き惚れていると、電話が終わった琉聖さんが戸口に姿を現した。


「ゆず、起きたのか」


「……琉聖さん、私に何か手伝えることないですか?」


「手伝い?」


「はい 書類の整理とか……」


琉聖さんは私の顔を伺うように見てから、書斎に招き入れてくれた。


「助かるよ こっちに来て」


断られるかと思ったのに……。


「ここに座って、このデータの打ち直しをして欲しい」


私は琉聖さんの執務机の前に座らされた。そして背後から抱きこまれるようにして、琉聖さんの腕が伸びマウスを操作していく。手伝おうとしているのに、胸がドキドキと高鳴っていく。


説明を受けながら、これなら出来そうだと安堵した。
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