契約妻ですが、とろとろに愛されてます
『ゆずは?』


「ちょ、直接言いますっ」


『早く帰って君の顔が見たい じゃあ、切るよ』


「あ!琉聖さんっ」


『なんだい?』


「ぁぃしてます……」


一瞬、間があいて『ありがとう』と嬉しそうな声が聞こえた。


恥ずかしくてすぐに携帯を切ると、胸にセーターを抱きしめた。


食べよう、食べて体力をつけなければ……。


セーターをソファの上に置いて、ダイニングテーブルに近づいた。


食事が済むと、再びソファに座りセーターの仕上げ作業に没頭した。つなぎ合せる目がずれないように慎重に縫っていく。明日がクリスマス・イブだと思うと頑張れる。頑張って仕上げないといけない。


私は何かから追われるようにセーターを仕上げる作業を急いだ。







「……出来た」


セーターの最後のつなぎ目を繋ぎ、毛糸を処理する。私は出来上がりに安堵する。


琉聖さん、気に入ってくれるかな……。アイロンをあてないといけないけれど、それはプレゼントを渡した後にしよう。


時計を見ると、もうすぐ明日になってしまう。琉聖さんがいつ戻って来てもおかしくない時間。


私は急いで出来上がった紺色のセーターをたたんで箱に入れた。


グリーンのリボンで箱を結ぶ。リボンの仕上がりに満足してひとり笑みを浮かべる。


プレゼントの箱を大事に持つと、ウォークインクローゼットの自分用の引き出しにそれを入れた。


引き出しにしまい終わると、明日のドレスに目が行く。


この漆黒のドレスは琉聖さんと私が一目ぼれした。スカートの半分の位置から、下にかけて大輪の真紅バラが刺繍されている。前身ごろはハート型にカットされて女らしいライン。袖はバラと同じ真紅のオーガンジーで透けた素材がふわっとさせている。


琉聖さんは黒のタキシード、中に着るシャツはフリルが付いたもので、一見、女っぽい感じを受けるけれど、琉聖さんが着ると似合い過ぎる。一度、それを着た琉聖さんを見たら惚けそうになった。

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