契約妻ですが、とろとろに愛されてます
病室で私達は知り合ってから初めてのお正月を迎えた。


病院のお正月は何の実感もなく、入れ替わり立ち代りお姉ちゃんや慎、琉聖さんのご両親が訪れ見舞ってくれた。


一月が過ぎ、二月になっても病状は良くならず、日に日に私は弱っていく気がした。


お姉ちゃんや慎も頻繁に姿を見せてくれた。慎は私を笑わせようと笑える出来事を得意げに話して気分を明るくしようとしてくれる。


琉聖さんはいつまでも出勤しないわけにはいかず、会社に出ている。大変だと思う。仕事が忙しい中、私の心配をしなければならないのだから。でも、疲れるそぶりも見せずに私の為に朝・晩と必ず顔を出してくれた。


だから、琉聖が顔を見せる時は辛い顔を見せないようにしてベッドの上に身体を起こしている。


琉聖さんがいる時だけ元気が出る。ううん、元気を出さなければと思うから頑張れる。


******


今は広く豪華な病室にひとりきり。


ひとりの時はほとんど眠っているけれど、どういうわけか今は目を閉じても眠りは訪れてこない。


自然とため息が漏れると、身体を起こす。あまり同じ姿勢で横になっていると身体がきしむように痛む。


先ほど看護師さんが開けて行ってくれたブラインドから眺める景色は入院してから楽しみのひとつになった。五階なので見えるのは空と遠くのビル群なのだけど。


あの方向に真宮のビルがあるって言っていた。


今も私が見ている方向で琉聖さんは仕事をしている。


琉聖さんを考えると、胸がつまるような思いになる。


琉聖さん……ごめんなさい……。


琉聖さんの笑顔を見ると謝りたくなってしまう。言葉にすると、なんで謝るのだと怒るから心の中で言う。


病気が進行したとは言われていないけれど、そうだということはわかっている。


身体を起こすのも大変で、自分の身体じゃないみたい。


このまま……ずっと琉聖さんと一緒に居たい……貴方の顔を見て過ごしたい。ふたりでいられれば何もいらない……。


でも……もう無理かもしれない……。


神様……琉聖さんと一緒に居られる時を少しでも長くしてください……。


そう願わずにはいられない。


いつも心配そうに見つめる琉聖さんの瞳が痛い。


出来る限り一緒に居られるように頑張るからね?




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