契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「こんな時間にどうして……?」


「ゆず、気分はどう?」


琉聖さんは眉根を寄せたまま私の頬にそっと指先で触れて聞く。この言葉を数えられないくらい聞いている。


「はい 大丈夫です」


私はにっこり琉聖さんに微笑む。


「俺の前で無理はしないいいんだ」


「無理はしていないよ?」


私が言うと、小首を傾げて悪戯っぽく笑みを浮かべる琉聖さん。


「だったら、たくさん食べられるな」


「えっ……?」


「弁当を持ってきた 佳代子さんが作ってくれたんだ」


久しぶりの佳代子さんの手料理に私は目を輝かせた。


病院食で無ければきっと美味しく感じられるに決まっている。


琉聖さんは点滴のチューブに触れないように慎重に私の身体を起こすと、お弁当を置くためにテーブルを設置して三段の重箱を開け始めた。


彩も鮮やかで、種類も豊富なおかず。とても美味しそう……。


「琉聖さん、お弁当は嬉しいけど玲子先生に怒られちゃうよ?」


「大丈夫だ、話はしてある」


「美味しそう……病院の食事は美味しくないから嬉しい……」


笑みを浮かべると、琉聖さんが身を屈めて頬にキスを落としてくれる。


「食べさせてあげよう 食べたいのを教えてくれ」


「えっ?自分で食べられる――」


「わかっているが、食べさせたくなったんだ」


甘い笑みを浮かべて言う琉聖さんに私は卵焼きを指さして口を開けた。

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