契約妻ですが、とろとろに愛されてます
ゴールデンウィークは私にとって幸せな日々だった。


泊りがけで琉聖さんが来てくれたからだ。


ベッドの上に横になって琉聖さんがノートパソコンと向かい合っている姿をそっと見る。


彼はまだ私が眠っていると思っている。


たった今、目が覚めたばかりだから。


目が覚めるとソファに座った琉聖さんがいて嬉しい。


私の心の中にいろいろな考えが渦巻いている。


最初の頃は私は死ぬのだから、私の側にこれ以上いると死んだ後もきっと私を思い出すであろう琉聖さんが可哀想だと思った。


最近の私の考えは変わった。会えない琉聖さんを思って寂しく死ぬより、少しでも一緒に居て幸せを味わいと思うようになった。


それは自分本位の考えで、残された琉聖さんには酷なのかもしれないけれど……。


私の視線を感じたのか、琉聖さんが顔を上げて私を見た。


「ゆず、起きたのか」


私が起きているのがわかると、笑みを浮かべ立ち上がり来てくれる。


「たった今……」


琉聖さんの手が私の額に触れる。この熱を確かめる仕草は毎回やる癖になってしまったようだ。


「少し熱いな……」


「そうかな……大丈夫だよ?」


不思議な色の瞳が曇るのを見て微笑んだ。



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