契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「うん……でも、私頑張るからね?」


「ああ そばに付いてあげられないが頑張るんだ 心はいつも一緒に居る 忘れないでくれ」


柚葉の頬を指で撫で唇をなぞる。


そっと唇を重ね、ゆっくりと離れる。


「愛している」


「私も……愛してます」


それから俺は眠る柚葉を何時間も見続けた。


どうか、頑張って欲しい。


「頑張れ」と口で言うのは簡単で、なおさら言葉に出来なかった。


心の中で切に願う。


君が治りますようにと……。


******


翌日、看護師が迎えに現れた。


知らせを受けた美紀さんや慎君、お袋、麻奈さんが病室にいた。


「来てくれてありがとう……必ず、元気になるから」


移動の為に車イスに座った柚葉は皆に力強く言った。


俺はこれから柚葉が過ごす無菌室の入口まで付き添った。


俺たちの手はしっかり繋がれていた。


無菌室の入口に到着すると、柚葉は俺に約束した。


「琉聖さん、頑張るから 心配しないでね?」


「ああ、待っている」


俺はそれしか言えなかった。


気の利いた一つも言えずに柚葉を無菌室へ送り出した。


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