契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「琉聖さ~ん!」


柚葉が少し離れた所で大きく俺に手を振ると、デジカメを片手に駆けて来た。


髪をポニーテールにし、胸にコアラのプリントがされたTシャツを着た柚葉は病院で寝ていた頃の面影はない。


活動的で表情ははつらつとしている。


「ゆず、転ぶぞ?いい写真が撮れたのか?」


わき目も振らず駆け寄ってきた柚葉に俺が微笑む。


「うん!もう最高!もっともっといろいろな所を撮らなくちゃ」


柚葉がデジカメを大きなバッグにしまうと、俺の腕に指をかけた。


俺達は念願の新婚旅行に来ていた。


骨髄移植を受けた後、柚葉は心配された拒絶反応もなく順調に回復していった。


まだ多少の貧血は見られるものの健康な体になれたのだ。


今は幸せの絶頂期と言ってもいいだろう。


今でも俺の心配性は治っていないが、もう俺達の幸せを脅かすものはない。


「ゆず、ホテルへ戻ろう」


俺は柚葉の手に指を絡めた。


「え?だって……さっき来たばかりだよ?」


シドニー滞在もまだ二日目で、見る所はたっぷりあるのにと、柚葉は不満げだ。


「ふたりっきりになりたいんだ」


俺の言わんとする所を悟り、柚葉の顔が耳まで真っ赤になった。


俺は立ち止まり腕を柚葉の腰に回すと引き寄せる。


「琉聖さん?」


俺はこれ以上ないほどの甘い笑みを浮かべて誘惑することにした。


「愛している」


次の瞬間、俺は柚葉のピンク色の唇に熱いキスを落とした。



                      END
< 306 / 307 >

この作品をシェア

pagetop