契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖さんの腕の中で少しの間じっとしていた。そうしているうちに身体が楽になっていく気がした。


よく分からないけれど、幸せを感じている……そんな気分だった。
だけど、その気分は琉聖さんが突然私から離れてベッドを出てしまいしぼんでいく。


「……シャワーをお借りします」


突き放されたような気分で起き上り、やっとの事で口を開く。


「ああ」


ゆっくりと素足を床に付けると、自分でも笑ってしまうくらいたどたどしい足取りでバスルームに向かった。


バスルームに入ると、身体がぐらりと揺れた。


「え……」


眩暈だった。壁に手を付いて我慢していたけれど、酷い眩暈にずるずると床に座り込み治まるのを待つ。


眩暈を感じなくなると、時間がかなり経ってしまったことに気づき、時間をかけずにシャワーを浴びた。




寝室に戻ると琉聖さんは白のサマーニットとジーンズという服装に着替えていた。


Vネックから覗く素肌に男らしい喉元を目にして胸が高鳴るのを感じた。


「あ……遅くなってごめんなさい」


自分ひとりでシャワールームを独占していたことが申し訳ない。


「他のシャワーを使った。気にするな」


何気ない優しさに思わず笑みが浮かんでしまう。


「送りがてら食事をしよう」


「いいえ……琉聖さんがよければ帰りたいんですけど」


時計の針は八時を回った所。帰るのに遅くはないけれど、疲れを感じて早く休みたかった。


「あの……買っていただいた洋服はここに置かせてもらってもいいですか?」


あんな量の洋服を持って帰ってお姉ちゃんに見られたら、と思うと恐ろしい。

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