契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「親父と来たんですか?」


「彼は今ニューヨークよ」


「ああ そうだったな」


「柚葉ちゃん、琉聖も仕事中毒だからつまらないわよ 出張が多くて、夜も遅いし、お付き合いもあるから、ほとんど家にいないのよ?」


「余計なことは吹き込まないで下さい」


琉聖さんは貴子さんを軽く睨んで言う。


「はいはい 今から暴露したら婚約解消されてしまうかもね?邪魔者は消えるわ 柚葉ちゃん 近いうちに遊びにいらしてね そうだわ、お買い物にも行きましょう」


「そのうち 家に連れて行きますよ」


琉聖さんが約束すると、貴子さんは嬉しそうな足取りで去って行った。


「うしろめたいです……」


ふたりだけになると、私はぼそっと呟いた。


「お袋は君にべた惚れだな 君を選んで正解だ」


皮肉めいた微笑を浮かべている。


「もう帰るか 十時を過ぎている」


「そんな時間……」


いつの間にか時間が過ぎていて驚く。


ヒールがあたった箇所もヒリヒリしているし、疲れていたのでこれで帰れると思ったらホッと安堵する。


琉聖さんにエスコートされて出口に向かう。そこへ、私達の行く道を背の高い細身の女性にさえぎられた。


「菜々美?」


琉聖さんが目の前の女性に驚いている。

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