契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「まあ、濡れてしまって……」


その女性がスタッフに目配せすると、すぐにタオルが渡された。


「ありがとうございます」


頭を下げて受け取り、良い香りのするタオルで濡れた箇所を押えるように拭き始めた。


大分、拭きとれたところで私に似合いそうなドレスがあると言われ、スタッフの女性に奥のフィッティングルームに連れて行かれた。


******


なんで……こんな高価なワンピースを着せられているの……?


値札が付いているわけではなかったけれど、お店の雰囲気、ワンピースの素材、デザインから高価なものだとわかった。


鏡の前に映る姿を見ると、いつもの自分ではない自分の姿に目を見張ってしまう。


こんなワンピースを着て行くところっていったいどこ……?。とんでもないことに巻き込まれている気がする。


「とてもよくお似合いですわ」


いつの間にか、フィッティングルームに入って来た女性に言われてその声にビクッとなる。


「えっ、いや……あの……」


淡いラベンダー色のドレスは、ウエストが絞られきれいなドレープを描き、ちょうど膝下までの丈。私にとっては広く開き過ぎているように思える背中のVライン。ちょうど肩甲骨の間で紫色のリボンが結ばれ可愛らしいけれど、そのデザインは胸が強調されている気がする。


「華奢なのにお胸があるので、とても綺麗に着こなされていますわ この髪留めで御髪をおまとめになれば背中も美しく見えますわ」


濃紫の花の髪留めを見せられたものの首を横に振った。髪を留めれば背中が露出してしまう。そんなの恥ずかしくて嫌だ。


残念そうな女性は髪留めを台の上に置くと、ベビーピンク色のピンヒールを差し出す。


こんなにヒールが高い靴、私には初めての体験だ。


履き心地は良いけれど、すごくヒール部分が細身で折れちゃいそう……。


何センチあるのだろう……かなり高いから履くと、背筋がスッと伸びて身長が高くなった気分になる。

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