契約妻ですが、とろとろに愛されてます
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琉聖さんは日本橋の落ち着いた趣のあるの料亭へ私を連れて行ってくれた。


少しずつ出てくる会席料理は美味しくて、箸が進む。


「明日は何時のフライトですか?」


「十時のフライトだ」


辛口の日本酒の杯を手にした琉聖さんはブランデーを傾けるのも似合うけれど、日本酒を飲む姿は浴衣でも着せたらもっと素敵だななどと思う。


「いいな~ ニューヨーク ブロードウェイでミュージカルを見てみたいな それから――」


「一緒に行くか?」


「え?琉聖さん、行けるわけないじゃないですか~ びっくりしたっ」


「いや、本気だ」


琉聖さんはいつになく真剣な顔で言う。


「海外旅行……行ったことないんです パスポートも持っていないし」


正直に告白した。


「嘘だろ?」


琉聖さんが驚いたように片方の眉を上げる。


「本当です。あっ!馬鹿にしたでしょ!」


「いや……珍しいな」


「行く機会がなかったんです」


そう言うと、味のしみた煮物を口に運ぶ。


「パスポートは取っておいた方がいいな 自分で取るか?それとも桜木に任せるか」


「え?」


「近いうちに行くかもしれないからな」


「はい」


私はにっこり琉聖さんに微笑んだ。

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