異国で咲く花
そういわれて、いちこは静歌に時空神の話をした。

眠かったこともあって、時空神の仕事が安定すればいちこと祐希はもとの世界へともどることが可能であることと、七杜がいちこの世界で七杜として存在しているはずだということを伝えた。


「私たちはどうなるんですか?」


「えっ?」


「私たち退治屋のメンバーは、いちこも祐希も七杜もいないまま生きていけというのですか?」


「え・・・だって、私が来る前はみんなでやっていたのに・・・。
あ、違いますね。ひとりいなくても悲しいですよね。」



「七杜や祐希はいない状況もあり得るんです。
だけど・・・いちこは居てくれないと・・・さびしいから。
私たちの見せるとこ、見せられないなんてつまらなくなってしまいますよ。」



「はぁ?」


「なんていうか・・・私たちは目立ちがり屋というか、カッコつけたいヤツらなんです。
だから退治屋なんて言って集まっています。

私と聖智は退治屋なんてしなくても職はあったんですからね。
なのに、退治屋になったのは、七杜から退治屋になればかっこいいとそそのかされたからです。」



「そそのかされたんですか?」


「男がどうせ仕事をやるならば、皆ができないことをやった!と高らかに偉そうにカッコつけようぜ!
なんていってね。

当時はバカバカしいような楽しいような気持ちだったけれど、やっていくうちに人々から感謝されて、命がけで仕事をしているからこそ、カッコつけられる快感に酔ってしまうくらいでしたよ。

そして・・・いちこがやってきて、もっとカッコつけたくなってしまった。

この私がね・・・。」



「静歌さんはとても上品で美しくて、聖智さんはきれいで妖艶な感じで・・・いつも女性が集まってきているじゃないですか。

私は戦闘に出しゃばって、逃げてばかりですぐドロドロのぼろぼろで隠れるところを探しまわってるような薄汚い存在ですよ。」



「それはあなたがそう思ってるだけです。
聖智も言ってたけれど、あなたはまっすぐでかわいい人です。

リズの後ろで震えながらも、なんとか心は敵に向かっていっている。
一緒に闘っていればわかることです。

もう、すっかり仲間としてなじんでいるんです。
そして、私たちが心惹かれる女性としてもね。」



「静歌さん・・・ほめても何も出ませんよ。
きっと、そういう気持ちも時空のゆがみからきちゃってるんですよ。
うん、たぶんそうです。

私は帰らなきゃいけない人なんです。
ずっといたら・・・この世界が崩壊しちゃいます。」



「崩壊は困りますね。できれば・・・私もあなたの世界へ移動できたらいいんですけどね。」


「ええ、みんなあっちで会えたらすごくうれしいのに・・・。
あ、そろそろ私、診療所にいって寝ますね。」



「すみません、ひきとめてしまって・・・お送りします。」


いちこは診療所まで静歌に送ってもらうと、胡紗々に挨拶をした。


「寮が潰されて困っていたところ、ありがとうございます。
今夜から晴海さんともどもお世話になります。
よろしくお願いします。」


「あ、堅苦しいのはもういいから。
晴海さんはもうとっくに夢の中のようですよ。

あ、ちょっとお茶をいれましょう。」



「あの、胡紗々先生、明日もお仕事早いですのにお気遣いなく・・・。」
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