ベイビー、君は僕のもの
ぎゅっと、掴まれた手首に力が加わった。

かなちゃんが、わたしの首筋に顔を埋める。

真っ黒な髪が、頬をくすぐる。



「ひゃ、かっ、かなちゃ……っ」

「………」

「あ、……いた……っ」



チクリと、鎖骨の少し上に痛みが走った。

何をされたのか理解して、その瞬間わたしは渾身の力で、かなちゃんを押し返す。



「かなちゃん……っ!!」



思ったより簡単に、かなちゃんのからだは離れた。

わたしは先ほど唇が触れた箇所を右手でおさえながら、上半身を起こして彼を見つめる。



「な、なんで、かなちゃん……」

「………」



かなちゃんは、何も言わない。

ただ、少しだけ苦しそうな表情で、シーツを見つめているだけ。

わけがわからなくて、わたしは首筋をおさえていない方の手を、きつく握りしめた。



「……なんで、何も言わないの」

「………」

「なんで、黙ってるの……っ」



ああ、涙が、こぼれそう。

だけど必死に歯を食いしばって、こみ上げるその感覚に耐えた。



「……きらい、かなちゃんなんて、大嫌い……っ!」
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