恋花火~あの日、言えなかったコトバ~
「そろそろお腹空かない?店、予約したから行こう」
「ホントに?どのお店?」
「それは着いてからのお楽しみで。少し歩くけど我慢してくれな」



「わぁ…素敵、でもここってすっごい高いんじゃないの?」

「今日はカナが主役の日だからな。お姫様に相応しい店をと思って」

「間違いなく今日は人生で1番の誕生日だぁ。ナオキくんありがとう…大好きだよ」

しっとりと店内をピアノの旋律が流れる。
お店の中で生の演奏があるレストランなんて、女子高生のあたしには初めての体験だった。

「この曲、不思議な感じがする。初めて聞くのにどこか懐かしいような…クラシックかな?」

「ショパンの曲だよ。夜想曲、英語でノクターンとも言うけど」

「やそうきょく?ショパンなら聞いた事あるけど分かんない…」

「夜を想う曲って書いて夜想曲、だよ。俺もそんくらいしか知らない」

「ナオキくん物知りだね。もしかしてピアノ習ってたりした?」

「いや、大学でピアノとか音楽系の講義あるから少しかじっただけ。あ、次のメニュー何にする?」

「えっと、じゃあ次は…」


こうしてあたしの18回目の誕生日は過ぎていった。
壁に掛かったカレンダーをめくってあたしはナオキくんの誕生日に大きくハートマークを書く。
12月のナオキくんの誕生日には今日のあたしと同じくらい喜んでもらわなきゃね。
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