恋花火~あの日、言えなかったコトバ~

2人目のメンバー

「あたしの歌…どうでした?うまく歌えてますか?」
1曲歌い終わり、彼女が不安げに俺に尋ねる。

「うん、すごい良かったよ。予想以上に上手かった」
それが俺の正直な感想だった。
最初はカナちゃんを一目見た時、【こんな大人しそうな子が?】と思っていたのだが
実際にマイクを持って歌わせてみると
そこには大袈裟ではなく1人の<歌姫>がいた。

「良かったぁ…人前で歌うの、慣れてないんです。あたし、友達とすら今まで1回しかカラオケって来た事ないんですよ」

「マジで?それなのによく今日決断できたね。見ず知らずの俺なんかと」

「ううん…それでも歌うの好きだし、今までナオキさんとメールとかしてて信頼出来そうな人だって思えたから」

「ありがとう。じゃあ改めて、俺と一緒にバンドやっていきませんか?」

「こちらこそ、あたしからお願いしたいくらいです。これからよろしくお願いします」

ぺこりとカナちゃんが頭を下げる。

「じゃあギターとドラムはこっちでまた探してみるから」

「はい。あの、よかったらこれから場所移してお話しませんか?音楽以外の話もしたいです」

こうして俺と彼女は出会った。大げさな表現だが、俺にとっては運命の出会いだったと思う。
音楽が結びつけてくれた俺と彼女の縁はこの先もずっと続いてくと信じてやまなかった。
あの日、あの事件が起こるまでは…
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