恋花火~あの日、言えなかったコトバ~
園児たちもほぼ帰宅し、閉園時間を迎えた俺は最後に園長先生と事務員さんに挨拶をしてタイムカードを押す。

「ではお先に失礼します。お疲れ様でした」

「あ、先生ちょっといいかしら?」

園長先生に呼び止められ、改めて後ろを振り返る。

「はい、何でしょうか?」
「先生は今、大学四年生よね?もう進路は決まったのかしら」

「いえ…それがまだなんですよ、卒業論文とか課題が山積みでして」

「そう、先生さえ良かったら卒業したらうちに来ませんか?保育士資格取られるまでは契約社員という形になってしまうんですけど、うちも今人手が足りてなくて。男性の方が特に」

突然の申し出に一瞬耳を疑うも、このままだと就職浪人コース確定だった俺は即座に返答しようとしたが、安易に答えられる問題でもない為

「有難い申し出ですが、少しお時間いただけますか?やらないといけない課題もありますので…申し訳ありません」

「そう、でも出来れば秋頃までにお返事いただけるかしら?来年度の予定も組まないといけないので」

「はい、必ずご返事いたします。ありがとうございます」

再び帰路につく。電車の中で俺は悩んでいた。園長先生の手前、とっさにごまかしてしまったが俺にはもう一つ、やってみたい事があったのだ。
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