東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
不景気で政府は軍事費は縮小していた。


その一方で失墜した軍の力を強くしようとする奔走する軍人たちも居た。


そんな連中が今の軍司令部の上層部だ。


そんな折に開催された軍縮会議。


海軍が望んだ艦隊の希望保有量7割。しかし、会議で提示された保有量は7割に満たなかった。



浜口首相は海軍令部の意見を無視して提示された保有量をそのまま呑んでしまった。



「…海軍司令部の東郷元帥が浜口首相のやり方に不信感を持っています」



海軍内は浜口首相の支持派と反対派に分かれていると噂されてるが、証拠はない。





「…浜口首相の判断は俺から見ても浅はかだ…他国の言いなりだ。無理もない」

「政府の首相と言えど…海軍の内部事情まで把握はできません…軍の機密は高い壁に阻まれています」







陸軍と海軍の軍部内でも上層部の権力と保身の為、大きな軋轢が生まれていた。
それ以上に政治家と軍人の軋轢はこれを機に酷くなりそうだ。


「…政府と軍部の間にも溝が生まれそうですね…」



樋川は何気に呟いた言葉。
ヤツも俺と同じ思いを持っていた。

俺は漠然と不安を抱いた。



















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