東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「何を苛立っている…征史」


御堂陸相が私たちの元に来た。

私は背筋を伸ばし、姿勢を整える。



「…本当に美しい奥方だ…何か征史が粗相すれば遠慮なく相談してくれ…こやつは私には頭が上がらぬからな」




「…父上っ!?」


「・・・」



御堂陸相は意外にお優しい方で少しだけ安堵した。



交替で挨拶に来る人の列も途切れ、私は中尉殿の方に目をやった。


彼もまた、私に目を向ける。


ほんのりと祝い酒に酔い、赤くなった中尉殿の顔。






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