東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
結婚した男女のごく自然の成り行きで…私たちも例外ではない。



「いってらしゃいませ」


征史さんと私は食事中も会話を交わす事なく、静かな時間を過ごした。


「いってくる」



気持ちの汲み取れない抑揚のない彼の低い声がチクリと針のように心臓に突き刺さる。



彼を見送って寝室に戻った。



彼のベットの掛け布団を剥いで自分がつけた鮮血のシミを見つめる。



私は彼の貞操を奪われたーーー・・・



そして、首筋に彼の唇の跡が紅く一片の花びらのように残っていた。



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