嘘と微熱と甘い罠

…仕方ないじゃない。

“なにかある”んだから。





それが今までとは正反対のものだなんて。

目の前の不機嫌な顔は。

微塵にも思っていないだろう…。

私は相良から視線を外したまま。

自身を落ち着かせるために小さく息を吐いた。

…頬を掴まれたままで、ってのはなかなかマヌケな姿だけど。





「…黙秘権なし。ガッツリ話してもらうからな」





私のその姿が相良にどう映ったのかなんてわからないけれど。

眉間に刻まれたシワはそのままに。

頬を掴んだ手を緩めると、その手はそのまま私の頭にのせられた。





「ほら、行くぞ」

「え、ちょっ…待ってよ!!」





いつの間に支度を終えていたのか。

相良は自分のバッグを手にすると。

またポンポン、と私の頭に触れてからデスクを後にした。




< 135 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop