[短編]美容師だって恋をする
沢田・・・恋します・・・
マミを見送ってから数時間。

僕は、もう店を閉めてもいいくらいの充実感で

でも、午後3時にもなると

次のお客がやってきた。

「沢田さん・・・いつもの感じで。」

若いうえに、この無愛想な男は月に2度ほどくるお客。

特別な接客前には必ずうちに寄ってくれてる。新宿では有名なホストクラブのホスト。

「ルイくん・・・今日もお疲れですか?」僕の冴えないメンズトークの開始は

ルイにはなぜか心地いいみたいで、僕を最終的には「沢田」と呼びつけにする。

「沢田・・・なんか今日はノリがいいな。」

さすがルイの推測は鋭かった。

「沢田・・・競馬とか?」

そうそう・・・メンズトークはいつも、ギャンブルのこと。勝ったとか負けたとか・・・

そして、ここ数か月


僕にかぎって、女の子の話は特にない。

話の随所で、僕は無意味に笑いが止まらない。

それをみたルイは、

タダならぬ僕の浮かれ具合を察知し。

「沢田・・・あんまり調子に乗んなよ。」

見事に出る釘を打たれた気分だったが

僕はマミに出会ったことが嬉しくって、はしゃぎたくって・・・

手元は順調に・・・


僕は今日もルイを最高のイケメンホストに仕上げていた。

「ルイくん・・・これでいい?」

「・・・・よし。

沢田・・・いつもありがと。」

ルイは髪が整うと、見ちがえるような態度で

僕に頭を下げ、店を後にする。

その後ろ姿は惚れ惚れするオーラを発していた。

いつかルイくんにもマミのことを話そう。僕はワクワクしながら

店を片づけるのだった。


< 9 / 47 >

この作品をシェア

pagetop