君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】



「理佳さん、あの子か言ったことは気にしないで。

 俺も、理佳さんのことはTVで知ってた。

 あの番組に出演して願いを叶えて貰った難病の子たちが、
 次々と亡くなってるのも知ってる。

 だけど……俺は、今もこうやって生き抜いてくれてる理佳さんに逢えて
 嬉しい。

 あの頃、TVでしか出逢えなかった理佳さんに、
 こんなに身近で逢えるのがわかった時、嬉しかったんだ。

 だから、理佳さんの演奏を聴かせてよ。
 
 今年小学校になったばかりの弟がさ、
 最近練習してるんだ。

 寮生活だから、たまにしか練習してるの聴けないんだけど
 ショパンの幻想即興曲きかせてくんない?

 右手と左手のリズムが違ってるの?
 なんかすごく弾きにくそうに練習してるんだよね」



何時の間にか、理佳の傍まで歩いてきた隆雪が
弟の話題まで出しながら声をかけた。


そのまま隆雪が、俺にアイコンタクト。


それを受けて、
俺は美加をつれてその場を後にした。



美加は勘違いしてる。



多分……美加が考えてるほど、
アイツは幸せだと感じてないと思うから。



俺が言ってどうなるわけでもないけど、
ただ……人と関わることが少なくて、
人間関係の経験値が浅いアイツに、いろんな友達を作ってやりたい。


俺の友達が、理佳を助けることが出来るんだったら
理佳を笑顔にしてやれるんだったら、
率先して紹介してやりたい。


寂しがりやの彼女の心は、
どんなに素面で過ごしていても、
俺には泣いているように見えるから。


美加が理佳に向かって
吐き出した言葉の意味が気になりながらも、
俺は、美加にも……理佳の友達として交わってほしいと告げた。
< 102 / 247 >

この作品をシェア

pagetop