君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】




学校の後は、バンドの練習の為
いつものスタジオへと隆雪たちと向かう。





あの学院祭の日、一緒に演奏した瑠璃垣と廣瀬。

あの二人とは、あれ以降会うことがなかったけれど
怜さん越しに、アイツらが元気に過ごしてるって情報は入ってきた。


瑠璃垣って言うのは、つい最近、マスコミを賑わせた一大企業。

そんな大企業の坊ちゃんじゃ、
簡単にバンドなんて出来ねぇよな。


そんなことを思いながら、Ansyalとしての確定メンバーは隆雪と俺。

それ以外のドラム・ボーカルは、怜さんの知り合いの人にゲストで参加して貰う形で
地道に活動を続けてた。

時折、ツインギターになる時は怜さんに手伝って貰いながら。


地元じゃ少しずつ知名度も上がっていった。


LIVEで演奏するようになると、
俺を応援してくれる人たちとも交流が始まった。



ステージにあがると、それだけで『たくみー』っと名前を呼びかけてくれる女の子たち。
俺は本名のまま「TAKUMI」を名前として使って、隆雪は「TAKA」と名乗るようになった。




「託実、次の曲。
 頭から行ってみようか。
 智のドラムをよく聴いて、リズム隊をしっかり」



そう言って怜さんの声がスタジオに響く。
俺は、今以上にドラムの音に神経を研ぎ澄ませる。



学院祭の廣瀬が叩いたドラムよりも、豪快でパワーのあるドラミング。

手数・足数の多さに、思わず見とれてしまうほど
圧倒するようにドラムパフォーマンス。

そんなドラムに負けないように、相棒の音を大きくして支えようとするものの
気が付くと、ベースの俺がドラムの足を引っ張ってる。


ドラムは、他の楽器よりも音が大きくて演奏しはじめると
モニター越しでないと他の音が聴こえなくなる。

その分、ベースがリズムをキープしてドラムを支える。
それが本来のベーシストの役割なのに、ベースの俺がリズムを乱して、
ドラムの智さんに支えて貰ってるような有様だった。


そんな状態のまま本番を迎えられるはずもなく、
負けず嫌いの本領を発揮する俺は、
メトロノームを正面に、延々とスタジオで地道な練習を繰返し
バンド練習に備える。



本番までの残り少ない間、理佳のことは親父たちに任せて
俺は隆雪と練習に開け続けて、3日の本番を迎えた。



SHADEの演奏の前に、いつもの様に時間を貰って演奏した俺たちは
練習の成果か、まとまった演奏を送ることが出来て、
沢山の拍手と声援を貰えた。


そんな拍手と声援が、必死に頑張ってきた努力の時間を
優しく包み込んでくれた。


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