君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】




凄く言いにくいことを話してくれてるのは
俺にもわかってる。


だから否定して暴れ出したい衝動を必死に抑えて
自分の中で消化したいと必死に対応を脳内で張り巡らせてる。



だけど憤りのない想いは、
俺自身の両手の拳をぶつけあうことと、
歯を力一杯噛みしめることが俺が出来た抵抗。





夏がアイツを連れていく……。







そう言われているみたいで、
凄く不安になって、
俺はその夜、帰宅してから……ベッドの上で
体を小さく縮めて体育座りをしながら、
両手で俺自身を抱きしめた。





理佳のことを思いながら……
その時が来ることに怯えながら。





八月になって……もうずっと逢えないと思っていたアイツは、
病室に戻ってきた。



理佳自身のたっての希望で……。


そして……その本当の意味を知った時、
俺は思わず壁を拳で叩き付けた。


*



大好きな託実と……
大切な人たちとの最期を大切に過ごしていきたいから……。




*







夏休み……最後の二週間。





俺は毎日の時間を惜しむように、
アイツの元へ通い続けた。




アイツを……
アイツの旅立ちをこの目で刻み込む為に……。
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