君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】




「おいっ、うっせぇって」





だけどその日は違った。、



泣き続ける私に届いた乱暴な口調の眠そうな声。



ゴソゴソと音がして、
近づいてくる足音が聞こえて
カーテンが一気にめくられた。




次の瞬間、眩しい光が私の顔を照らして
その隣人の姿を浮かび上がらせた。




「夜は寝る時間だろ。
 泣いてんじゃねぇよ」


「ごめん……。

 でも……涙、止められないの。

 けど、迷惑だよね。
 ウザいよね。

 邪魔だよね。

 早く涙が止まれば、
 迷惑かけずに済むのに……ね。

 なんで涙って、
 止まらなくなるんだろう。

 泣いてどうなるってわけじゃないのに。

 誰かを悲しませて、
 不安にさせるだけだって
 知ってるはずなのに……」



自分で言ってる言葉すら、
正直何が伝えたいのかわからない。


それでも私は……思うままに
言葉を吐き出すのは、
やっぱり誰かの優しさに縋りたいから?



「別にウザいとか言ってねぇって。

 チッ。
 えっとー、何ていうか……
 一人でコソコソ泣いてんじゃねぇ。

 何があったかなんて、
 まだ俺がわかるわけねぇ。

 あったばかりだしな。

 けど話す気があるなら聞いてやる」



そうやって降り注いだ声の後、
何時の間にか、ベッドサイドに腰掛けた
隣人の体に、グイっと引き寄せられてた。


久しぶりに伝わって来た、
人肌の温もり。



定期的に伝わってくる、
トクン・トクンと脈打つ命の規則正しいリズム。



「ったく。
 
 涙、これで拭けよ。
 パジャマに鼻水つけんじゃねぇぞ」



そんなことを口走りながら、
それでも優しさが伝わってくる少年。


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