唇が、覚えてるから

返事なんかしたくなかった。


「……っく……っく……」


ひきつけにも似たような呼吸をしながら、涙だけを地面に落としていく。


「琴羽の夢は……?」


祐樹が問いかける。


「……っく……っく……」

「夢は?」

「……」

「……夢は?」


問いかける声が強くなる。


私の夢……。それは。


「………かん……ご…し……」


小さく、呟いた。


「そうだ」


祐樹は私の体をそっと離し、顔と顔を近づけて言った。

顔は、怖いまま。


「看護師になろうとしている琴羽が、そういうことを言うな」

「……」

「生きるのに意味を求めるな。生かされてんだ、琴羽は」

「……」

「残念だけど、俺の命は18まで…それはきっと、決まってた」

「……」

「琴羽はそれ以上生きることを許された人間なんだぞ。無駄にすんな」
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