唇が、覚えてるから

「明日も早いのに、あんな奴の為に時間裂くなんてバカバカしい!真理も早く寝ないと明日にたたるよ。おやすみ」

「まーったく。誰のおかげでこんな時間になったと思ってんのよ」


そんな真理には返事をせず、頭からすっぽり布団をかぶった。

彼のことなんて忘れて、ほんとに早く眠ろう!



……なのに。


目を瞑っても目を瞑っても。

瞼の裏に浮かぶのは、彼。


散々愚痴ったけど。

真理にも言っていないことがあった。


あの状況での去り際。

私は、ある言葉を彼に投げかけられていたのだ。



『でもさっきの笑顔、俺、好きだわ』



……どうして、こんなにドキドキするんだろう……。
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