唇が、覚えてるから
等身大のふたり
彼───祐樹は驚いたことに同い年だった。
大人っぽいから絶対年上だと思っていた私の予想は大外れ。
祐樹は頻繁に知り合いのお見舞いに病院を訪れ、偶然遭遇した時には言葉を交わすようになった。
しかも樟瑛大の付属高校に通っているというから更に驚いた。
通称"樟大附(ショウダイフ)"と呼ばれ、そこにある医学部進学コースの生徒は、エリートのお坊ちゃま揃いだと噂されている。
卒業後はそのまま樟瑛医大にエスカレーターで入るのだから、高校に入学した時から医者へのエリートコースを歩み始めていることになる。
祐樹は普通科らしいけど、それでも樟大附に入るのは簡単じゃない。
相当優秀なんだろう…。
祐樹の住んでいるところと、私の実家のある町とでは、かなり格差があった。
同い年なのに、会話にギャップがあるから。
たとえば部活の話をした時。
「祐樹って水泳部?」
「なんで?」
「肩幅広いからなんとなく」
「ラクロス」
「ラクロス?」
「ラクロス知らないの?中学んときからやってる」
「名前だけは知ってるけど。都会にはオシャレな部活があるんだね。私の中学校なんてサッカー部もなかったよ」
「どんだけ田舎?」