唇が、覚えてるから

……どうしたの?

そんな祐樹が気になってたまらない。


「しょうがない夢なんて絶対ないよ。誰だって、夢見ることから全てが始まるんだから」


聞いたらいけないのかな、なんて思う反面、余計に聞きたくなる。


「……そだな、」


祐樹はポツリと言って、膝の前で手を組んだ。


何かを考え込む様なそんな仕草に、私もそれ以上は黙って様子を見守る。

風だけが、2人の間を通り抜ける。

少しの時が流れて。


「俺は……」


祐樹がようやく重い口を開きかけたとき


ピロロロ~ン……


……私のスマホが邪魔をした。

音量MAXに設定された着メロが、盛大に鳴り出したのだ。

< 56 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop