唇が、覚えてるから
……どうしたの?
そんな祐樹が気になってたまらない。
「しょうがない夢なんて絶対ないよ。誰だって、夢見ることから全てが始まるんだから」
聞いたらいけないのかな、なんて思う反面、余計に聞きたくなる。
「……そだな、」
祐樹はポツリと言って、膝の前で手を組んだ。
何かを考え込む様なそんな仕草に、私もそれ以上は黙って様子を見守る。
風だけが、2人の間を通り抜ける。
少しの時が流れて。
「俺は……」
祐樹がようやく重い口を開きかけたとき
ピロロロ~ン……
……私のスマホが邪魔をした。
音量MAXに設定された着メロが、盛大に鳴り出したのだ。