唇が、覚えてるから

寮へ帰り、真理を起こさないようにそっと部屋のドアを開ける。

シャワーを浴びてすぐ布団へ潜った。


今日はものすごく疲れたなあ。

私が出産したわけじゃないのに、とてつもない疲労感に襲われていた。

なのに、目を閉じてもなかなか夢の世界へ入れない。

興奮して眠れないのだ。


あ……祐樹。

ここでようやく祐樹のことを思い出した。

無事に出産したって、伝えなきゃ。


スマホを取って……気づく。

そういえば、祐樹の連絡先知らないんだった。

明日は土曜日だから、月曜日まで少なくとも2日間は会えない。


……話も……途中だったな。


またその内、病院で会えるよね。

祐樹のことを考えると優しい気持ちになり、いつの間にか眠りに落ちていた。
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