YUKI˚*





「はぁ…はぁ……」



どれくらい走ったかな


やっと男の人をまいて、須嶋くんが走るのをやめた



あたしはその場に崩れ落ちる




「ごめんゆきちゃん…大丈夫?」


「うん、ヘーキ…」



須嶋くんは走るのも速いんだなぁって思って


ただ、上手く息ができなくて



それでも須嶋くんが、あたしの手を握っていてくれたから




「まさか、こんなとこまで来ると思わなかったな…」



その言葉に固まる




ああ、そうか


だから



だから須嶋くんはもう


あたしを地元に連れて行こうとしなかった




「須嶋くん」


「…なに?」






お願い






「ケンカしないで」





ごめんね


こんな言葉であたしは



キミを縛る



この言葉でキミがどれだけ苦しめられるかなんて


これぽっちも





「もう、ケンカしないで」


考えてなかったの







「……わかった。ゆきちゃんが言うなら」



キミが笑う


だからあたしは安心してしまう




その笑顔の裏にどんな想いが隠れているかなんて



あたしにはまだ



わからなくて






ただキミは



約束は必ず守る人なんだね



なにがなんでも





……バカなんだから



あたしとの約束なんて破ってくれればよかったのに





「じゃ、帰ろっか」


「うんっ」




それでもまだこのときは


あたし達は大丈夫だった




幸せだったの





大好きだよ須嶋くん



だからやっぱりこのとき



あんな約束したこと




あたしは結構


後悔してる








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