紙ヒコーキとアオイくん
と、そこで唐突にあることに思い当たって、あたしはアオイくんの顔を凝視した。

そんなあたしの視線に気付いた彼が、少したじろぐ。



「……どうしました春日先輩。いつにも増して顔がアホっぽいですよ」



すっかりいつもの感じに戻っているアオイくんの目の前で、すっくと立ち上がる。

そしてこちらを見上げる彼とまっすぐに視線を合わせ、満面の笑みを浮かべてガッツポーズを作った。



「アオイくん、あたし決めたよ!!」

「……何をですか」



ほんとは聞きたくないですけど、という本音がダダ漏れなトーンで、彼はそう呟く。

あたしは構わず笑みを保ち、そして言葉を続けた。



「決めたの! あたしは将来、アオイくんをお手伝いする人を目指すって!」

「………は?」



そう言って見事に、アオイくんはポカンとした表情であたしを見上げた。

──ああ、今日はアオイくん初めて見る顔ばかりだなあ。

そんなことを思いつつも、あたしはいそいそとローファーを履く。

そして未だ固まったままのアオイくんに向けて、ぴっと敬礼してみせた。



「それじゃああたし、今から家帰って勉強がんばりまっす!」

「は、ちょっとせんぱ……」

「じゃあねーアオイくん! 帰りは気を付けるんだよー!」



それだけ言い残すと、あたしはさっさと家路につく。

そんなあたしの後ろ姿を、呆気にとられた表情で見つめて。



「……なんなの、あの人……」



呆然と彼が呟いたことを、あたしは知らなかった。
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