①憑き物落とし~『怨炎繋系』~
「夕浬、ごめんな? ――少し、調べものしててさ」

「調べ物?」

「ああ、お前のとこの例の黒い女。なんとかできる霊媒師をだよ」

「え、……でもほら、もうさんざん断られたし……」

「なにもしないよりはいいだろ? その人は前に言ってた柚子の知り合いの人なんだけど、まだ無名に近いけど、いままでに解決できなかった事件はないそうなんだ」

「でも」

「柚子が言うにはちょっと変わり者みたいだけど、頼りにはなりそうだぞ」

「……怜二」

「俺は大丈夫っつっただろ? ……力になるから、お前もまだ諦めるなよ」

「……うん、わかった」

「じゃあ、後で向かえに行くから、少し待っててくれ」



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「紹介するのはいいんだけどさ、その人、お兄ちゃんの友達の知り合いで、少し交流があったんだけど、お兄ちゃん最近縁切っちゃったみたいで。結構クセがあるみたいよ?」

 柚子が後部座席でバックミラー越しに苦笑いする。

「仕方ないさ、たとえどんな人でも今は藁にもすがりたいんだ」

「柚子、ごめんね」

「私は大丈夫! ちょっち、気まずいけどまぁ平気」

「でも調べた限りじゃ腕は確かみたいだぞ。最近ネット上ではいくらか話題になってるみたいで、なんでもこのテの業界じゃ新人だけど、請け負った依頼は必ず果たす。それも一人で」


 ――ひとり?


「……その人、大丈夫なのかな」

「え?」

「ううん、なんでもない」


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