① 憑き物落とし~『怨炎繋系』~
『たすけて』
『生まれそうでうごけない』
『許せない』
『なんで』
――声は、怖気が立つほど低いものだった。
祖母は考えるよりも先に、消防士を振り切って母の元へと急いだ。
そして、燃え盛る部屋に飛び込むと、風呂場で既に黒い塊となっていた母が手を伸ばしていた。
「たず……げデ」
祖母は原形を保っていない母に駆け寄ると、その瞬間に母は白目を向き意識を失った。いや、死んでしまった。祖母は喉が裂ける程に叫んだ。しかし、絶命したはずの母の下で何かが蠢いているのを見た。『私』だった。
母は、自分で出ようと、強引に生まれてきてしまった私のせいで胎盤と子宮を破裂させ、体の自由を奪われていた。私は、まだ火の届いていない母の体の中で、 消え入りそうな命を繋いでいた。祖母は炎の中で私を取り上げた。消防士が突入し、祖母と抱きかかえている私を救出した。へその緒は、すでに焼ききられてい た。
祖母は、事実を語った。
私に罪悪感を生まないように、細心の注意を払ったのだろう。普通ならば私にそのような感情は生じない。
しかし、なぜなのか。
祖母が語る過去のシーンが、まるで古いフィルム映画のように掠れながらもそのイメージが鮮明に浮かび上がってきてしまうのだ。