愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(24)味方
茜の自宅があるビルが見える位置までやって来た。

思ったとおりと言うべきか、和菓子屋『さえき』の店の前に救急車が一台停まっている。そして、そのすぐ後ろにはパトカーも見えた。

大きな道路沿いで商店街の近くのため、道行く人が足を止め、結構な野次馬が集まっている。


茜は太一郎の背中にいた。

裸足の彼女を歩かせるわけにもいかず、太一郎は茜を背負ってここまで来たのである。

途中、茜は泣きながら呟いた。


「罰が当たったんだよね……。きっと、太一郎に嘘をついたから……だから、こんなことに」

「馬鹿言うなっ! 女を襲う男なんか、殺されて当然なんだ。俺が言うんだから、間違いねぇよ」


真っ赤な回転灯の明かりが目に刺さるようだ。

一歩近づくごとに、茜の震えが酷くなる。おそらく、彼女の脳裏には、新田の流した血の色が浮かんでいるに違いない。


太一郎は茜を説得してここまで連れて来た。

だが、思えば太一郎にしても、こういった警察の対応など上手い方ではない。逆に、自らが逃げ出して逮捕された経験もあるくらいだ。

しかし、ここで太一郎が震えて怯えていては、誰が茜を守るのだろう。


自分の置かれた環境により、人は変わらざるを得ないときがあることを太一郎は痛感する。


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