愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(32)責任の所在
「ごめんなさい。本当に……ごめんなさい。どうか、太一郎さんを許してください。お願いします」


黙り込む太一郎の横で、奈那子が悠里に頭を下げる。

それを見て、太一郎は胸が引き絞られる感覚を味わった。


「奈那子、お前が謝ることじゃない」


その声は上ずり、微かに震えている。だがこれ以上、奈那子に頭を下げさせるわけにはいかない。

太一郎は奈那子を後ろに下がらせ、自ら悠里と向き合った。


「本当に申し訳なかった。心から反省してる。一度で足りないなら、何度でも頭を下げる。どうしても許せないなら、訴えてくれていい。俺はそれだけの罪を犯してきてるから……。そのときは、奈那子には申し訳ないけど、服役する覚悟でいる。だから……」


太一郎はゆっくりと、身体をふたつに折るほど頭を下げ、悠里に謝罪する。

それ以上のことも、それ以外のことも、今の太一郎にはできなかった。何度同じように詫びて回ればいいのか、赦される日は来るのか。それを思うと、太一郎の心は萎えそうになる。

いっそ殺してくれと言いたいが、それで太一郎が犯した罪が消えるわけではないのだ。むしろ、罪は深くなる。


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