深淵に棲む魚


 とにかく早く、男の視界から消えたかった。

 人が「化けもん」と呼ぶ醜悪な姿を、男の前にさらけ出していることが耐え難かった。

 あちこちにダダンと身体をぶつけながら、死に物狂いで桟へ向かった。



 男はその間、黒い丸薬について説明していた。


 相変わらず涼やかに。






 物静かな口調とは対照的に、その内容は身の毛のよだつ、恐ろしくておぞましいものだった。





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