あの時とこれからの日常
今までのつらさを寂しさをわかってくれるたった一人がいれば、それでいい

だから

「あなたたちに認めてもらおうなんて思ってないわ。でも、負けるつもりもない。…私は、何があっても海斗を信じてる」

それだけよ

ふわりと柔らかに、けれど強く空気を動かし、しるふは唖然とする彼女たちの横を通り過ぎる

「ああ、そうそう。それと、相手に押し付けるだけの愛情を恋だとか愛だとか、それが相手のためだとかほざいてるお子様たちの相手してる余裕なんてないの。お得意のお父様頼みも無駄よ?そんなことで泣いてやるようなしおらしい女じゃないのよ」

それだけ、じゃね

とさわやかにほほ笑み、しるふはくるっと踵を返す

言いたいこと言ったー、と軽やかな足取りで廊下の角を曲がると

「…っ。海斗」

壁にもたれる海斗がいた

「もー、驚かせないでよ。どうしてそう思わぬところから飛び出すのー」

「人をゲーム機の中のキャラクター同然にいうなよ。…それより、気のすむまで蹴散らしたんだろう?」

「ん?まあ、海斗見たく根元からぼっきりってわけにはいかないだろうけど、ちょっとは短くできたと思うよ、彼女たちの鼻」

と得意げに少し胸を張る

ぽんぽんとセットした髪が崩れないようにしるふの頭を撫でると、うれしそうにへへっと笑う

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