あの時とこれからの日常
「わかってますよ」

机の上に乗せた肘の上に顎を乗せてICUを見つめるしるふは、そっとつぶやく

「海斗も言ってました。昔の私にそっくりなのが入ってきたって。見てて飽きないって」

似てるからしるふへの想いまで移ってしまうほど海斗は軽い男ではない

そんなことはこの何年間かでわかりきってしまっていること

海斗からの想いを疑ったことなど、黒崎姓にかわってから一度もない

ただ…

「時々黒崎先生を視ないとだめだなって」

そうしないとすれ違っていってしまいそうで

「…昔は黙ってても黒崎先生は隣に居たし、たとえデートドタキャンされても、せっかく作った料理を一人で食べることになっても海斗が、黒崎先生がどんな顔でどんな思いで患者と向き合ってるかを感じられたからすねるだけで最終的には仕方ないなって思えたけど、」

ICUを眺めるしるふの瞳は少し切なさを帯びている

「やっぱり時々頑張ってる海斗をみないと自分の大変さばっかり押し付けちゃいそうで」

視えないからこそ自分から見に来ないと

育児や家事だって大変なんだとなのになぜ帰ってきてくれないのかとぶつけはじめたら終わらない

知らないところで頑張っている海斗を知らなければ、その海斗の時間を、大変さを

思いやれなければきっとそのうち崩壊してしまう

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